スポーツが社会課題の解決にどれだけ貢献できるか?
皆さんは、「スポーツ×社会」というと、どんなことを思い浮かべるだろうか?
このコロナ禍で、アスリートたちが、Zoomなどのオンラインツールを活用してファンと交流をしたり、トレーニング映像をSNSで公開するなどして、ピッチ外での活動を積極的に行っていたのは、スポーツファンならご存知のことだろう。
なかでも、サッカー・日本代表の長友佑都選手がNPO団体と協力し、ひとり親家庭を支援するプロジェクトを始めたことが大きな話題となった。そのプロジェクトの第一弾として開催したクラウドファンディングでは、約2000人の賛同者から、5千万円以上の寄付金を集めた。それらの寄付金は、NPO団体を通じて、ひとり親家庭や経済的に困窮する世帯へ食料の支援などが行われている。
社会に横たわる課題を知り、自分の無力さを知る
これは一つの例に過ぎないが、日本が抱えるさまざまな社会課題の一つに、「シングルマザーの貧困」があることは多くの人が認識しているだろう。厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によれば、シングルマザーの平均世帯年収は、243万円。
この状況は、新型コロナウィルスの影響でさらに深刻化している。私も母子家庭に近い環境で育ったため、母親の尋常じゃない苦労を目の当たりにしてきた。長友選手の活動をあとから知った私は、ほんのわずかだが別の団体を通じて寄付を行うことにした。
また、そんな最中に、友人のシングルマザーから「派遣切りに遭い、来月から収入がなくなってしまう」という連絡を受けた。だが、私には彼女の話を聞いてあげること以外には何もできなかった。
結局私はいまだに、目の前の困った人を救う力すら持っていない。「長友選手のように!」とは言わないが、せめて目の前の誰かを救えるよう、力をつけなければと決意を新たにしている。
チャンスは巡り巡って訪れるものなのか?
このような決意が導いてくれたのかどうかはわからないが、このたび「HEROs Sportsmanship for the future(以下、HEROs)」プロジェクトに参画し、さらに公式スポーツライターとして活動させていただくことが正式に決まった。
このHEROsプロジェクトでは、
「アスリートの社会貢献活動の推進により、スポーツでつながる多くの方の関心や行動を生み出し、社会課題解決の輪が広がる未来をつくる」
というビジョンに基づき、熱意を持ったスタッフと錚々たるアスリートが集まって、社会課題の解決に向けた取り組みを行なっている。
以下は、HEROsのコンセプトムービーだ。本当にカッコいいので、ぜひ見てもらいたい。
スポーツ界が社会貢献することの意味
上述の通り、私はこれまで、アスリートが社会との接点を持ち、社会に貢献するような活動を追いかけて、情報発信をしてきた。そのような活動に興味を持ったきっかけは、スポーツの特徴の一つに「公共性」があることを知ってからだった。
私たちはスポーツをするとき、そのほとんどは公共の運動施設や学校施設を利用してきた。また大人になってからも、日本で大好きな競技を観戦するときには、自治体がもつスタジアムやアリーナで試合を楽しんでいることがほとんどである。
私たちが楽しんでいるスポーツ活動の多くは、社会からの恩恵を色濃く受けている。スポーツ関係者はその事実をもっと強く意識するべきではないか。これからは、スポーツを通じて社会に恩返しをするような活動がもっと増えて欲しいし、そのような活動がもっと広く知られるようになって欲しい。
社会課題に取り組むアスリートの活動にアンテナを張って取材するというのは、我ながら、スポーツライターとしては、かなりニッチな路線だったとおもうが、自分のポリシーを貫いて活動してきた結果、このような大きな役割を与えられたことに、大きな喜びを感じ、同時に強い使命感に駆られている。
書くだけではない、行動にこそ価値を。
一般的なスポーツライターというと、スポーツを題材にして記事を書くことが仕事だ。しかし、私がHEROsプロジェクトに求められていることは、ただ記事を書くことだけではない。これまで経験してきた様々な知見をそこに落とし込み、自分にしかない熱量で社会の課題に対してアプローチし、そこで感じたことを、読者の方々の心に突き刺していきたい。もちろん、ただの「口だけ」「書くだけ」にはなりたいくないので、自分も行動していく。
日本のスポーツ界もようやく再開の第一歩を踏み出したばかり。アスリートたちの社会活動にも、ぜひ注目してみて欲しい。