プロレスラー・垣原賢人から発せられた自然回帰への誘い
僕が『サステナブル』というキーワードを知ったのは、恥ずかしながらわずか数年前の夏のことだった。確か、RISING SUN ROCKFESTIVALの仕事で北海道を訪れた時のことだったと記憶している。
仕事が終わり、帰りの飛行機まで少しだけ時間ができたので、フラッと北海道大学のキャンパスまで足を運んでみた時に、キャンパス内の広報掲示板に貼られたチラシをみて、そのキーワードがなぜか、僕の目に飛び込んできた。
広報掲示板の前に立ち尽くし、そのチラシを眺めながら『サステナブル』つまり“持続可能な”という言葉の意味をしばらく考え込んでいた気がする。不思議なことに、なんのチラシかも覚えていないし、デザインもほどんと記憶に残っていない。とにかく、そのキーワードだけが僕の脳内にしっかりと刻印された。
2019年のある日、知人の紹介でプロレスラーの垣原賢人さんが、引退後にクワガタを使ったイベントを職業にしながら子供達に自然の大切さを伝えていることを知った。
僕は、いまOCEANSというアラフォー世代の男性向けのファッション・ライフスタイルマガジンで、定期的に記事を寄稿させてもらっている。その中で、垣原賢人さんの今を伝えられないかと考えた。幼少期の原体験を思い出すような、自然と触れ合った日々を思い出してもらうような記事が書けないかと思ったのだ。
そのフラッシュバック効果を狙って、冒頭はこんな文章から始めることにした。
子供の頃、日が暮れるまで昆虫採集に没頭したあの日々を覚えているだろうか。
あの頃、僕らの好奇心は間違いなく、バッタやトンボ、蝶、そしてカブトムシやクワガタなどの昆虫に向けられていた。特に発達したツノを持つカブトムシや大顎を持つクワガタの格好良さに、強い憧れを抱いた読者も多いのではないだろうか。
思えば、僕らの好奇心は時の流れとともに変わっていった。森が切り開かれ、あらゆる場所がアスファルトで舗装されることに違和感を感じることもなく、新しいモノや新しい娯楽に夢中になった。その便利で快適な暮らしの中で、僕らは昆虫を忘れてしまったのだ。
いま読み返してみると、いささか野暮ったい書き出しのようにも感じるが、それでも、僕の関心が、自然環境に向かっていること、それを読者に問いかけてみたいという意思があることだけはなんとなく、わかってもらえるのではないだろうか。
奇しくも僕は、愛する我が母と同じ病・悪性リンパ腫を患っている垣原賢人さんによって、自然環境を考えるきっかけを、明確に与えられたのだ。
この時、僕は不思議な縁を感じずにはいられなかったが、この縁は、このあとさらに大きな展開をみせることになる。